2010.06.27 Sunday
夏のスフマートについて 1

WILDSWANSの一部の革小物では「スフマート」と呼ばれる技法を使ったアンティー
クカラーを定番として販売しておりますが、それと並行して「日本の四季」をテーマ
に、その季節毎にそれぞれ異なるカラーで展開していく「季節限定色」のスフマート
も発表しています。(この季節限定色は全4回を予定していて、春には春のスフマー
トを、夏には夏のスフマートを、秋には秋のスフマートを、冬には冬のスフマートを
展開するという、とても実験的な試みです。)
ではWILDSWANSにおけるスフマートとは一体何なのかを今一度ご説明しますと、1
枚の大きな革を丸ごと染色するむら染めとは違い、革小物1つ1つに絵を描くように
色を入れていく手法を取っているのが特徴で、ベースとなる白い革に段階を踏みなが
ら様々な数の色を暈しながら染め込んでいく染色技法です。白い革をキャンバスに見
立て、1点1点専門のカラリストが手作業で色を付けていきますので同じ物が2つと
無く、それぞれに個体差もあるのですが、複雑且つ独創的なエイジングが楽しめる大
変魅力的なカラーです。本来は絵画に於ける暈かしの技法ですが、WILDSWANSでは
革に於ける染色の可能性を何処までも広げるための「実験の記録」であり、季節限定
色では古色などのアンティークカラーには拘らずに色々と挑戦していこうと考えてい
ます。
前回ご好評をいただいた桜の木をモチーフとした「春のスフマート」に続き、第二回
目となる期間限定色は「夏のスフマート」となります。日本の夏って何だろうと色々
考えた結果、候補は沢山あったのですが、カラリストの方の助言もあり、今回は天の
川をモチーフとすることに決定しました。
私事で恐縮ですが、子供の頃、夏休みに八ヶ岳の麓で見た視界いっぱいに広がる天の
川は、今でも強烈な思い出となっています。文字通り今にも星が降ってきそうで、ゾ
ッとするような、少し怖さを孕んだ美しさがありました。ヴェガ(織姫)とアルタイ
ル(彦星)とデネブを結ぶ「夏の大三角」を突っ切るこの巨大な川は、実は自分達が
住んでいる銀河系を内側から見た姿だと、当時理科の先生に教わった直後だっただけ
に、初めて見る銀河系という「肉眼で見える生の宇宙」は、当時からボサーっとして
いた私には衝撃が強過ぎでした。視界いっぱいに広がる天の川を見ているとただ綺麗
なだけではなく、途方も無い時間の流れとか宇宙の大きさとか自分の無力さが一気に
自分に襲いかかってくるようで、少し頭が混乱しそうになったの思い出します。
天の川を見るという行為が自分にとって「思い出」となってしまったのは、今では都
市部はおろか郊外でも中々見ることが出来なくなってしまった為で、それがとても残
念でなりません。

天の川にまつわる行事に「七夕」がありますが、こちらは日本中で様々な形でお祭り
として継続されていくのかも知れませんが、天の川そのものは、もしかしたらその内
に見ることが出来なくなるかも知れません。そんなこともあり、今回の夏のスフマー
トはこの中々見ることの出来なくなった天の川を、失われつつある日本の夏として取
り上げてみました。
続きます。



